当院顧問精神科医のお話

当院顧問精神科医のお話

ppm-1-img-01精神科医として東京新宿で『まいんずたわーメンタルクリニック』というクリニックを開業し、うつ病に苦しむ患者様たちを10年近く診てきました。
そんな私が磁気刺激治療と出会ったのは2年前です。
それまでは磁気刺激治療の研究に本格的に携わっていたわけではなく、2012年2月にNHKスペシャルとしてテレビ放送された『ここまで来た!うつ病治療』を観て、新しいうつ病治療として紹介されたTMSに非常に興味を持ったことがスタートです。
それまでのうつ病治療というのは、皆さんもご存じのように投薬が主で、薬の効果がみられないと、薬を増量し種類も増えていきます。

結果として多剤処方になりやすい…。そのうえ日本ではメンタルの治療、つまり心療内科や精神科医に対して偏見や不信感があり、薬を使うのが怖いという意識があります。
そこで、気分障害の問題を抱えている方たちに、安全に行えて何も後遺症のない治療法があればいいと考えていたところでした。
番組を観てから1ヶ月後には「ぜひ日本でTMS治療を始めてみたい」と、米国の機器メーカー・ニューロネティックス社を訪ね、6月には私のクリニックが日本で最初となった1台を導入して臨床を始めたのです。
実はうつ病自体については、精神科全般でもまだよくわかっていないというのが事実です。最近では、マスコミにもよく登場しますが「新型うつ」というのが増えています。
この新型うつは、薬では治らない、環境の問題や性格の問題がその要因となる等いろんなことが言われています。
しかも、クリニックを受診すると、「うつ病」、「適応障害」、「双極性障害」、「新型うつ」、「人格障害」と、医師ごとに診断結果が違うため、「精神科医はいったい何をやっているのだ」と言われてしまうのが最近の問題ではあります。 
日本では従来、うつ病の診断を行うときには外因性、内因性など原因がどこにあるかを調べます。
例えば借金の問題や、恋愛問題、仕事の問題等、環境や生活自体に原因がある場合と、アルコールの飲み過ぎ等の物質によって起こる場合が「外因性うつ病」です。
そして、特に環境や生活には原因がないけれど、非常に性格が生真面目で、何でもひとりで引き受けてしまうタイプ。
従来日本の精神医学の中ではこのような場合を「内因性うつ病」として、いわゆるうつ病というのはこういうものなんだよと私たち精神科医は習ってきました。
この「内因性」に対する治療だけがうつ病治療で、「外因性」は原因を除去することで変わっていくものであるとする考え方が、ドイツ医学の影響からずっと日本の精神科医に脈々と流れているのです。

「生真面目で自分を追い詰めやすい」うつ病を招いてしまう性格があります

ppm-1-img-02従来の日本におけるうつ病とは、「内因性」と考える場合がほとんどだったとお話しましたが、「仕事を休んで休息をとりましょう」とお話したときに、新型うつの患者様はすぐに遊びに行くことはできるのに、会社に行ったとたんに具合が悪くなったりする。
でも、私が言っている「内因性」のうつ病の患者様は、生真面目でひとりで抱え込み過ぎて疲れきっているため、まず、一端仕事等すべてをストップしてみることをすすめているのです。
併せて、今までの対人関係や生き方が自分にとってよかったのかと振り返っていただき、それを改めたらどうだろうと、いわゆる支持的な認知療法も行います。

何でもひとりでしょいこんでしまったり、自分の責任だと思いこんでしまったり、あるいはこれはこっちしかないと決めてしまいがちな考え方や性格を改善する。
よくいわれるのがコップの水が「もう半分しかない」と考えるか、「まだ半分もある」と思うか、人間は考え方によってどうにでも変われるものなので、今までの固い考えを改め、人生そのものをゆっくり柔らかくすることで性格を変えたいと考えたわけです。
うつ病で最悪の場合というのは、自殺をしてしまうことです。
生きていても仕様がないし、人に迷惑をかけているし、もう自分は駄目なのだと死を選んでしまうのです。また、うつ病性昏迷といってしゃべれなくなる、動けなくなる、表情もこわばってしまう方もいます。
これはロックトイン・シンドロームといって、ベトナムの戦場から帰ってきた米兵のようにまったく無表情・無感情の状態で、食事も摂れない、意志の発動ができないといった症状が見られます。
この場合は、投薬の治療も効果が見られません。このふたつがうつ病でも最重症といえるでしょう。

ローマ時代にもすでに応用されていた電気痙攣のうつ病治療が進化を続け、いまTMS(経頭蓋刺激)へ

ppm-1-img-03どんな治療をしてみても効果がなく「死にたい」といい続ける患者には、最終手段としてこれまでECT(電気痙攣療法)を行ってきました。
この療法は、簡単にいうと両方のこめかみにパッドを貼り、100ボルトから110ボルトの電流を2~3秒くらい通電する方法です。このときに120ボルト以上にしてしまうと、頭の中に流れる電流はすごく強いものとなるため危険です。
人間の身体の中にはいわゆる通電物質と水が存在していますから、これまで頭の中に電流を流すことによって“脳がリセットされる”といわれてきました。
でも実は頭に電流を流すことで頭全体に放電が起こり、全身性の酷い痙攣が見られました。映画『カッコーの巣の上で』でジャック・ニコルソンが受けていた治療がこれです。
でも驚くべきことに、実はこの方法が90%くらいの患者様に効いて、一番効果がみられたのです。
てんかんが持病の方は、発作が起こる前にひどく怒りっぽくなったり、攻撃的になったりしますが、てんかん発作すなわち、全身性の痙攣が起こると、不機嫌さや攻撃性がスーッとなくなります。

この観察からわざと痙攣を起こさせたら病気が治るのではないかといわれ、何と紀元前のローマ時代から通電を用いた治療がなされていました。
当時は海にいる電気エイを身体に押し当てて通電し、関節炎や通風の治療として行われていましたが、これは非常に科学的な施術なのです。

ただし、頭に電気を流すのは恐怖感があるし、痙攣から骨が折れたり、後遺症として記憶喪失になったり副反応が起こるため、最後の手段だとされています。
現在、日本のオペ室で行われている方法は修正電気痙攣方法で、麻酔をかけて痙攣が起こらないようにしてから脳に通電する方法です。
見た目に痙攣する姿が酷く、この方法が重度のうつの状態を治すといっても脳の中では痙攣が起こっています。
日本のクリニックでは、今まで電気痙攣治療に使っていた木箱と呼ばれる機器があるのですが、現在は、この木箱をサイマトロンという新しいタイプの電気痙攣治療機器に変えています。
木箱の場合は交流式の電流に対して、このサイマトロンは直流の電流を使用し、波形を整えて副作用である記憶喪失などが起こりにくくしています。
この方法が、最近までうつ病等精神疾患治療に用いられていました。
そんなとき、2008年に初めてアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)が経頭蓋磁気刺激治療を承認しました。
ここから、患者様に後遺症も副作用もなく、安全で効果の高いうつ病治療の新時代がやって来たのです。

新宿ストレスクリニック アイランドタワー
最高顧問
仮屋 暢聡 先生(精神科医・精神保健指定医)

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